PSLXプラットフォーム計画(FAQ)
- PSLXプラットフォームとはなんですか?
- ソフトウェアが連携することでどのようなメリットがあるのですか?
- どのような連携方式があるのですか?
- クライアント/サーバ方式やWebサービスアプリケーションの連携方式と違うのですか?
- 企業独自の情報項目や業界固有の情報項目は扱えないのですか?
- アプリケーションベンダーはすべての機能を実装しなければならないのですか?
- 国際標準との関係はあるのですか?
- 共通インタフェースを実装するためにはどのような知識が必要ですか?
- 製造業のユーザ部門で独自に開発することは可能ですか?
- 共通コンポーネントはだれでも使えるのですか?
- システムインテグレータは不要になるのですか?
- いつごろPSLXプラットフォーム対応ソフトウェアは製品化されるのですか?
PSLXプラットフォームとはなんですか?
製造業の現場は、人中心の「生きた情報システム」です。これをITのしくみでより強化するためには、従来にもまして柔軟で拡張性の高いアーキテクチャが必要となります。それは、さまざまなパッケージソフトウェアがもつ必要な機能を相互に連携しあう「ベストオブブリード」型のシステム構築が可能であるしくみでなければなりません。
PSLX標準仕様は、アプリケーションソフトウェア間で情報連携を実現するための基本的な概念と具体的なオブジェクトおよびアクティビティを定義しました。また、さらにXMLを用いたメッセージ連携の仕様やRDBスキーマの標準テンプレートなどを定めています。PSLXプラットフォームは、これらの仕様をもとに、関係するパッケージソフトウェア製品が共通のインタフェースを備えるための基盤ということができます。
ソフトウェアが連携することでどのようなメリットがあるのですか?
従来は、データは情報システム部門で一元管理されていました。一方で、生産に必要な現場のさまざまな知識は、個々の作業場で管理されています。たとえば、加工方法や部品形状を改善した場合、その内容をその都度情報システム部門のマスターに反映されることは非常に手間とコストがかかるため、タイムリーにおこなわれていません。このような情報の断絶が原因となって、管理部門は現場が見えなくなっているのです。
また、生産現場の故障や能力の変化、品質トラブルなど、さまざまな予想外の状況をタイムリーにアプリケーション間で連携したり、在庫の引当や資材の到着日時などを相互にやりとりすることができれば、よりアジャイルな(俊敏な)生産システムに生まれ変わるでしょう。これらは、膨大な情報をタイムリーに交換する必要があり、現場の担当者が個人の力量で行うにはもう限界があります。
どのような連携方式があるのですか?
アプリケーション間で情報を受け渡す方法には、大きくわけで2種類あります。一つはRDBのようなデータベースにいちどデータを蓄積し、それを利用者が取り出す方法です。情報の提供者は情報の利用者をあらかじめ知ることはできません。もう一つは、メッセージによって、情報の提供者が情報の利用者に直接データを送信する方法です。こちらは、利用の形態があらかじめ想定できるので、データ構造を比較的シンプルにすることができます。
従来の情報システムでは、前者のデータベースによる連携が主流でした。このため、データベースの構造はますます複雑になり、容易にその内容を変更できなくなっています。PSLXプラットフォームでは、この状況をできるだけ避けるために、メッセージによる連携方式を志向しています。ただし、この場合でも、結果的にマスターデータやトランザクションデータに関する情報の提供者はRDBを内部にもつことに変わりはありません。
クライアント/サーバ方式やWebサービスアプリケーションの連携方式と違うのですか?
基本的に同じです。ただし、それらを利用したシステム構築のポリシーとして、できるだけ集中型ではなく、自律分散型になるように設計するところに特徴があります。具体的には、各アプリケーションは、情報の提供者であり情報の利用者である、という基本スタンスのもと、できるだけシンプルで安価なしくみでそのための機能を実装します。ベストオブブリード型のアプリケーションであるためには、特定のサーバ製品や特定のミドルウェア製品依存しない構造でなければなりません。
サーバーとして情報を提供するアプリケーションは、その内部にもつデータベースを隠蔽し、従来のようなSQL言語ではなく、PSLXプラットフォームで定義する照会メッセージに対してサービスを提供します。メッセージの形式や内容は、OSAISのPPS(生産計画スケジューリング)技術委員会で定めた仕様にしたがって定義され、今回のPSLXプラットフォーム用に準備された「プロファイル」に応じて利用されます。
企業独自の情報項目や業界固有の情報項目は扱えないのですか?
まずは初年度のプロジェクトとして、PSLXプラットフォーム計画でさだめた標準プロファイルにもとづいた情報連携を実現します。これは、プラットフォーム計画の参加企業が必要と認める最大公約数の情報項目であり、PSLX標準仕様バージョン2に基づいた内容となります。ただし、実際のメッセージ交換においては、ユーザ拡張領域がありますので、送信者、受信者双方の事前の合意がれば、標準にない個別の情報項目を設定して送受信することは可能です。
一方、PSLXプラットフォームに対応したアプリケーションソフトウェアは、前述のプロファイルに応じた情報連携が可能なように実装されていますので、PSLX標準プロファイルを他の標準プロファイルあるいは拡張プロファイルに差し替えることで、独自のメッセージ構造に対応することが可能となります。情報項目が増えた場合には、情報提供者あるいは情報利用者のアプリケーションロジックが変更になりますが、通信部分はまったく修正する必要はありません。したがって、今後、業界ごとに、あるいは特定の業務に特化したプロファイルができる可能性があります。
アプリケーションベンダーはすべての機能を実装しなければならないのですか?
アプリケーションソフトウェアが「PSLXプラットフォーム」対応と認定されるには、以下の3種類のレベルがあります。まず第一は、PSLXプラットフォームに準拠したXMLファイルが読めるあるいは書ける機能を持つことです。第二のレベルとしては、 PSLXプラットフォーム準拠のメッセージが送信および受信できる機能を持つことです。そして、最も高度なレベルとして、 PSLX準拠のメッセージ送受信においてOASIS PPS仕様にある機能がフル実装されている場合です。
ほとんどのアプリケーションはCSV形式のファイルを入力できます。PSLXプラットフォーム対応への第一歩は、これに加えてPSLXプラットフォーム対応のファイルを入力および出力可能とすることです。これは、おそらく共通コンポーネントを利用することで、10数行のコードを追加するだけで実現するでしょう。また、メッセージの送受信の場合も、クライアント機能の場合には、それほど多くの工数は必要ありません。詳細は、プラットフォーム計画参加者に別途配布する実装の手引き資料をご参照ください。
国際標準との関係はあるのですか?
現時点で、製造現場の情報連携を中心にその内容を規定している国際標準はありません。あえていえば、ERPと現場との連携に関するIEC62264が、パート3で製造現場のモデルをさだめていますが、そこではPSLX標準仕様が紹介されています。今後、この内容をベースに、より情報システムの実装を意識した標準が策定される場合には、PSLX標準仕様がその骨格となる可能性は大いにあります。
また、デファクトスタンダードとしては、データ連携に関して世界的なXML標準化団体であるOASISがPPS(生産計画スケジューリング)仕様を定めています。この委員会は、PSLXフォーラムがスポンサーとなり、日本人による日本発の標準としてPSLXメンバーが中心に2008年4月にバージョン1の仕様を公開しました。PSLXプラットフォームはこのOASIS PPS仕様をベースに定義されており、これからの国際的デファクト標準になる可能性があります。
共通インタフェースを実装するためにはどのような知識が必要ですか?
通常のアプリケーションソフトウェア開発の経験のある技術者であれば、だれでも実装は可能です。XMLに関する専門的な知識は必要ありません。現時点では、C#とJavaの2種類の共通コンポーネントが用意されていますので、開発言語として、このいずれかで行うことが望まれます。ただし、プログラミング技術とは別に、PSLX標準仕様に関する全般的な知識を必要とします。なお、今回のPSLXプラットフォーム計画に参加する場合には、これらの部分については、内部のセミナーや開発ミーティング等で必要に応じて解説しますのでご安心ください。
製造業のユーザ部門で独自に開発することは可能ですか?
今後、PSLXプラットフォーム対応のアプリケーションソフトウェアとして、たとえば品目マスターサーバーや、実績管理サーバなどがベンダーから提供された場合、それらの情報を利用した生産現場特有のアプリケーションは、製造業ユーザーが独自に開発可能となります。したがって、従来は、Excel等で個別に作成していた情報が、必要に応じて外部から取り込むことが出来、また、結果を第三者へ通知することが容易におこなえるようになります。
共通コンポーネントはだれでも使えるのですか?
ものづくりAPS推進機構(APSOM)が提供する共通コンポーネントやサンプルアプリケーションは、APSOMの会員であればだれでも無償で利用できます。PSLXフォーラムのメンバーは、この場合、別途APSOMの会員になっていただく必要があります。アプリケーションベンダーは、共通コンポーントを組み込んだソフトウェアを製品の一部として再配布することも可能です。これらの詳細は、APSOMのソフトウェア公開に関する規定および個別の取り決めに従って行われます。
システムインテグレータは不要になるのですか?
生産現場の情報化が進むことによって、システムインテグレータの仕事はさらに多くなると予想されます。そして、その内容は、労働集約的な要素が減り、より知識集約型になります。さまざまなアプリケーションソフトウェアの中で、どの製品がそれぞれの製造業の業務にあっているのかを、ニーズ面(お役様の要求)、シーズ面(利用可能な技術)の両面から常に敏感にとらえ、最適なソリューションを提供することが要求されます。
いつごろPSLXプラットフォーム対応ソフトウェアは製品化されるのですか?
PSLXプラットフォーム計画の第一弾として、来年(2009年)の6月に設計製造ソリューション展にて対応製品の発表を行う予定です。したがって、PSLXプラットフォーム対応製品は、2009年の夏ころから実際の製造業において利用可能となる予定です。なお、現時点でも、PSLX対応のソフトウェアを実装したシステムはいくつかのサイトで稼動しており、個別に開発する場合には、共通コンポーネントとしてのソフトウェアは現時点でも利用可能です。