エンジニアリングライフサイクルの視点

エンジニアリングライフサイクルの視点は、さらに製品ライフサイクルの側面と、工程ライフサイクルの側面の2つに分類できます。図に一覧を示します。図で白い部分は、本仕様書のスコープからはずれている部分で、詳細な定義はしていません。

まず、製品ライフサイクルの側面では、開発計画、製品計画、製品設計、設計日程計画、検査計画、製品試作、原価管理、品質管理、品質実績管理の9つの業務機能ブロックがあります。

また、工程ライフサイクルの側面では、投資計画、工場計画、工程設計、設置日程計画、保守計画、製造技術、設備管理、作業者管理、性能実績管理の9つの業務機能ブロックがあります。

製品ライフサイクル

開発計画(201)は、将来の競争優位の源泉となる要素技術を研究開発するための方針を決定し、そのアクションプランを設定します。マーケットのニーズをベースに、現時点の技術では実現が不可能な問題を、長期的な視野から取り組み、新しい製品やサービスの基盤をつくります。

製品計画(202)は、顧客のニーズに合わせて、近い将来に企業が顧客へ提供する製品を計画します。具体的な顧客の要求と、具体的な要素技術と、利用可能なリソースをもとに、具体的な製品の機能と市場への投入の時期を決定します。継続的に取引のあるサプライヤなど、関連企業と連携して計画を進める場合もあります。

図 エンジニアリングライフサイクルに関する業務機能ブロック

製品設計(203)は、製品が持つべき機能を実現するための、具体的な形状や構造を生産方法と合わせて決定します。ここで生成される情報は、生産のためのマスタ情報となります。個別の製品に関する情報と合わせて、製品ファミリなど、さまざまなオプションを利用することで仕様のバラエティを設定する場合もあります。

設計日程計画(204)は、製品設計に関する作業の日程を計画します。最終的に製品を得意先に出荷する日程と生産のために必要な日数を考慮して、設計作業の日程を設定します。設計のために必要な作業の抽出や、進捗に応じた日程の再調整なども含みます。

検査計画(205)は、製品が本来もつべき機能が、生産された個々の製品で実現されることを保証するために、生産の過程で検査すべきタイミングと具体的な検査内容を設定します。また、仕入先に依頼する資材の検査項目と検査方法を決定します。検査作業の作業指示は、詳細スケジューリングで設定します。

製品試作(206)は、製品設計で明らかにした製品の具体的な形状や構造を、現実の生産設備を用いて試作することで、最終的にその情報の実現可能性を確認します。また、量産を行う場合など、その製品をより効率的に生産するため改良点を見つけます。

原価管理(207)は、製品を生産するために必要となるコストを集計し、製品原価を計算します。製品計画や製品設計時点で想定した事前原価と、実際の工場の生産工程で生産してみて明らかになった事後原価を管理し、そのギャップを埋めるための方法を検討します。

品質管理(208)は、製品機能を具体的に表現するための品質指標を設定し、生産現場の個々の作業との因果関係を明らかにします。そして、想定した製品の品質と、工場で実際に生産した製品の品質とを比較することで、潜在的な問題を発見し改善を行います。得意先から得られるクレーム情報も対象となります。

品質実績管理(209)は、生産の現場において品質情報をモニタリングし、品質異常を早期発見するとともに、それらの日々得られる品質情報を蓄積し管理します。蓄積された品質情報は、さまざまな解析に用いられるほか、個別製品の品質のトラッキング情報としても活用されます。

工程ライフサイクル

投資計画(301)は、企業のバランスシートを考慮し、現在保持している資産を、長期的な視点からどのように活用していくかについての計画を策定します。将来的な投資対象として、従業員や工場などの設備にどの程度の資金を投入し、そこからの収益としてどう回収するかについて決定します。

工場計画(302)は、新規の工場建設や閉鎖も含め、工場全体や工場内の設備や装置をどのようなものにするかを決定します。市場の中長期的な動向をふまえ、あるいは新技術の動向をふまえ、投資計画にもとづき、それを具体化します。物流拠点など、工場外の施設も対象となります。

工程設計(303)は、製品設計で明らかとなった生産方法を、企業が保有する具体的な装置や作業者によって実現可能とするために、その設備の形状や構造、そして制御方法などを定めます。自動化ラインやセルでは、設備そのものの設計となります。量産を行う場合には、特に生産性や作業効率を考慮したものとなります。

設置日程計画(304)は、工程設計で設定された内容をもとに、実際に工場の設備を製造し設置するための作業を計画します。新規に工程を設定する場合と、既存の工程を改修する場合があり、後者の場合には生産日程と同期して行う必要があります。生産のための治工具の製造や金型の製造なども対象として含まれます。

保守計画(305)は、予防保全や予知保全など、工場の装置や設備が常に健全な状態であるようにするための作業に関する計画を作成します。具体的には、詳細スケジューリングと連携をとりながら、定期点検や部品交換、そして必要に応じて修理や異常時の対応などを計画します。

製造技術(306)は、製品試作を行った結果をもとに、本番の生産に移行するために実際の装置や設備を再度設計しなおし、最終的に生産ラインを完成させます。また、量産を行っている最中に、装置の不具合を直し、装置の改良を行います。作業者に対する作業手順書なども合わせて作成し管理します。

設備管理(307)は、生産のために直接的または間接的に必要な装置を対象に、実際に行う保守の作業の実行を管理します。保守計画をもとに、工場の現場で個々の装置に対して点検や修理を行うとともに、その結果や保守の履歴を保存し管理します。また、治工具および、装置に必要な部品や消耗品も合わせて管理します。

作業者管理(308)は、生産活動に直接従事する作業者について、それぞれの生産に必要とされる能力や習熟度を把握するとともに、個人レベルの勤怠を管理します。また、班編成やシフト編成を通して作業者の配置を行います。さらに、将来的な能力計画に合わせて、エリア単位あるいは作業区単位で必要な人数の作業者を確保します。

性能実績管理(309)は、装置や作業者など製造資源の視点から、実際に行った生産結果をトラッキングし、必要な部分を抽出し演算加工した上で、それぞれの製造資源のパフォーマンス情報として保存し管理します。性能実績情報は、装置や作業者の評価や、ラインのバランスの調整のために利用されるとともに、問題点を早期に発見するために定期的にチェックされます。