計画管理の視点での整理

計画管理の視点では、経営計画、原価企画、需給調整計画、仕様変更管理、基準日程計画、作業日程計画、詳細スケジューリング、キャッシュフロー管理、工程管理、仕掛品管理、そして、生産実績管理の11個の業務機能ブロックが存在します。これらは、以下の表のように、戦略レベル、計画レベル、実施レベルの3つのレベルに分けられます。

表 計画管理に関する業務機能ブロック


レベル
機能名 備考
戦略レベル 経営計画 予測不可能な将来
原価企画
需給調整計画 操作可能な将来
計画レベル 仕様変更管理 予測可能な将来
基準日程計画
作業日程計画
詳細スケジューリング
実施レベル キャッシュフロー管理 ほぼ現在
工程管理
仕掛品管理 過去
生産実績管理

 

APSが主に対象とする領域は、計画レベルと実施レベルです。これは、計画レベルが、予測可能な将来を扱うからです。ただし、戦略レベルの中で、操作可能な将来である需給調整計画も、APSにとっては重要な要素となります。 以下に、各業務機能ブロックについて、簡単に説明します。

戦略レベル

経営計画(101)は、企業全体の経営方針や、投資などに関する意思決定を行います。長期的な視点から、企業がもつヒト、モノ、カネ、情報といった資産を、いかに市場環境に適合させ発展させていくかについて考えます。

原価企画(102)は、企業が顧客に対して提供する製品やサービスについて、顧客にとっての価値と、それを生み出すために必要な原価をあらかじめ計画し、企業が将来得られる利益を計画します。さらに、計画された原価と実際の原価が等しくなるように、さまざまな生産システムを計画立案します。

需給調整計画(103)は、提供する製品やサービスについて、顧客が要求する需要量と、現有の生産資源の能力で生産可能な供給量とをバランスさせるための意思決定を行います。計画対象期間は、比較的中長期となり、月一回程度、製造、販売、財務などの責任者が一同に会して計画を策定します。

計画レベル

仕様変更管理(104)は、新製品の発売や製品のモデルチェンジなどのタイミングに合わせて、生産や販売や設計技術などが同期をとりながらそれぞれの作業を行っていくための調整を行います。また、どの部分がいつ変更になるかといった技術情報を時系列的に管理します。

基準日程計画(105)は、販売機能がとりまとめた得意先の販売予測と、生産機能が策定した生産計画との接点として、いつどの製品を何個つくるかを計画します。ここで設定した数量にもとづいて、販売機能と生産機能はそれぞれ詳細な計画に展開し、必要な場合には、この内容を介して相互に交渉を行います。

作業日程計画(106)は、製品を生産するために直接的あるいは間接的に必要となるすべての作業について、作業区のレベルでそれを実行すべき日程を計画します。ここでは、製品のみでなく、製品を構成するすべての構成部品が計画の対象となります。

詳細スケジューリング(107)は、各作業区において、個々の作業をいつ、どこで、どうやって実行するかを決定します。作業を割り付ける対象は作業場ですが、より具体的に、装置、作業者、治工具などを明らかにする場合もあります。それぞれの作業は、作業指示として、それぞれの資源の負荷や、必要な資材の制約を考慮して時間軸上に割り付けられます。

実施レベル

キャッシュフロー管理(108)は、生産活動によって、企業全体あるいは各現場レベルでどれだけ利益が生み出されたかを管理します。製品を生産するための原材料費や直接製造原価のみならず、間接費の配賦や、作り方による原価の違い、そして製品価値の動的な変化なども考慮します。

工程管理(109)は、各作業場に対して与えられた作業指示が、現実の生産として実施するまでを管理します。ここでは、作業指示を各製造資源が実施するため、さらに細かな実行指示に展開し、実現可能性を確認した上で具体的な資源に割当て生産を実行します。また、状況の変化に対応して、臨機応変に生産の実行を制御します。

仕掛品管理(110)は、工場における仕掛品を管理します。最終製品と購入した原材料以外はここで管理されます。棚卸しの管理や、中間倉庫の入出庫、そしてエリア内外の移動などを管理するとともに、在庫管理対象となっていない工程内の仕掛品や、生産途中の品目も考慮します。

生産実績管理(111)は、生産現場で実際に行った生産の内容をモニタリングし、実績データとして管理します。生産実績データは、機械から自動的に収集する場合や作業者によって入力される場合などがあります。生産実績は、常に生産指示との対比で管理され、必要に応じて再スケジューリングを要請します。