進化に柔軟な情報システムとは

ここで提示するAPSのための情報システムアーキテクチャは、従来のクライアント・サーバ方式の利点を生かしつつ、さらに個別の業務単位に独自のローカルな設計を可能とする自律分散型のしくみです。具体的には、以下の図にあるように、ミニDBを企業内部に多数配置し、ローカルに必要なデータおよび業務処理はローカルで実行し、必要に応じて個々の情報システム間で連携をとるというしくみとなります。個々のデータは、基本的にそのデータが生成された場所で保管され管理されます。

現在の情報システムとしての主流である集中型クライアント・サーバ方式では、事前に設計された情報の構造であるデータスキーマに適合しないデータはすべて欠落してしまいます。したがって、個々の生産現場の実情にあったきめ細かな情報システムとするためには、そこで必要となるデータの受け皿が別途必要となります。また、集中管理であるので、データスキーマの変更は各部署に多大な影響をあたえるため非常に困難な作業となっており、常に改善、改良を繰り返しながら持続的な進化が可能なシステムとは言えません。

情報システムの基本形態

分散型のデータモデルを採用した場合、当然のことですが、各独立した個々の情報システム間の処理の連携や、データの整合性が問題となります。独自に設計された2つの異なるデータスキーマ間で情報交換を行うためには、それらのデータの本来の意味のレベルまで立ち返って議論しなければなりません。このために重要となるのが業務スキーマモデルです。業務スキーマモデルとは、情報システムの実装形態に依存せずに企業活動(ビジネスプロセス)そのものを純粋に表現するために必要な情報モデルのことです。これは、ビジネスプロセスの各要素と関係、そして各要素に対する入力、出力、資源、あるいはコントロールなどを表現するために必要となります。

業務スキーマを定義するための具体的な道具として、PSLX技術仕様書の第3部で規定する業務オブジェクトがあります。これをそれぞれの企業の実情に合わせて組み立て、部分修正したものが、その企業に対する企業固有の業務スキーマモデルとなります。この個別業務スキーマモデルは、企業固有のビジネスの実体を表すものとして、少なくとも企業の数だけ個別に存在し、それらの企業の業務が変わるにつれてその内容も変化していくことになります。なお、個別業務スキーマモデルは、あくまでデータおよびその構造を表現したものであり、ロジックや処理手順に関する情報は含まれません。

つづく...