計画とスケジューリングの関係

ここでは、APSを、計画(プランニング)やスケジューリングなどの組織の意思決定の要素を統合させ、さらに各部門が組織間や企業間の枠を超えて同期をとりあいながら自律的に全体最適を志向するしくみとして定義します。

一般には、計画とスケジューリングという2つの用語は、特にその意思決定の特徴の違いについての明確な定義なしに用いられる場合が多く見られます。ここでは、計画とスケジューリングの違いを定義します。まず、一般的な概念として、計画という用語は、ある目的を達成するための手段を明らかにし、その実行可能性を確保することであるといえます。このために、計画では、さまざまなパラメータを決定します。
これに対して、一般に、スケジューリングという用語は、具体的なアクションを、具体的な資源のもとで実行するための具体的な手順に関する意思決定であるといえます。ここでは、さまざまな物理的な制約が関与し、実際に存在する各資源に対して、実時間軸上で、それらのアクションに関係するさまざまなパラメータを決定する必要があります。

意思決定の構造として見た場合、計画は常にスケジューリングの上位に位置づけられます。つまり、階層関係でいえば、計画の結果を受けてスケジューリングが実行されることになります。スケジューリングにとっての制約や目標が計画によって設定される場合が多いといえます。また、一方で、計画は、スケジューリングによって実行可能性が確認できた時点ではじめて、最終的に有効な計画案を得ることができます。この意味では、計画とスケジューリングはお互いに依存関係にあります。以下の図に計画とスケジューリングの関係を示します。


計画とスケジューリングの関係

計画とスケジューリングの違いは、より技術的にいえば、主に扱うデータモデルの種類からきます。計画とスケジューリングとでは、意思決定パラメータとして扱うデータモデルが異なり、それらが時間の概念とどのように関わっているかが、ここでは非常に重要となります。

まず、計画において、その中心的な意思決定パラメータは、一定の期間における何らかの値となります。たとえば、今月の生産数量、来月の部門売り上げ、来週の残業時間、などです。ここで重要なことは、計画では時間そのものを決定するのではなく、ある期間に対応する値を決定することが中心的な作業となるという点です。

これに対して、スケジューリングでは、その意思決定パラメータは、さまざまなアクションを実行する時刻そのものが中心となります。ある加工作業の開始時刻、あるいは終了時刻、倉庫からの出庫時刻、出荷時刻、などがあります。複数の作業の順序もスケジューリングの重要なテーマですが、これは、相対的な時刻の決定であるとみなすことができます。

計画とスケジューリングの関係としてまず指摘できるのは、一つの計画に対応する複数のスケジュールが存在し得るのに対し、一つのスケジュールに対応する計画はただ一つである、という非対称性です。スケジューリングのほうが解のバラエティは爆発的に多くなります。一般に、計画を最初に作った後にスケジューリングを行わざるを得ないのは、この性質が関係しています。

また、計画における意思決定パラメータがもつ時間幅が小さくなるほど、内容は緻密になり、スケジューリング問題に近い精密な解を導くことができるという特徴があります。一方で、パラメータの時間幅が大きいと、よりラフで全体を見通した計画が策定できます。つまり、計画における単位期間の決定は、計画とスケジューリングをより効果的に連携させるための大きなキーとなっているという点も指摘できます。

つづく...